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  旅日記 no.124
「新年は佐賀県唐津市のワークショップから」
2007年1月4日
こんにちは、金丸弘美です。
今日は「新年は佐賀県唐津市のワークショップから」

 佐賀県で始まった「唐津玄海食のプロジェクト事業」の大きなイベントを3つ終えて、いよいよ2007年1月から3月にかけて、10回のワークショップと町でのファーマーズマーケットの開催の準備が始まった。イントロダクションは、2006年11月3、4日の秋祭り「唐津くんち」での唐津駅前での市場の開催からだった。市町村合併での新たな地域の食が並んだ。これには1万1000名が集まった。

2回目は生牡蠣のワークショップを、デモンストレーションの形で、11月28日に唐津市本町の旧佐賀銀行の赤レンガの建物を使って行った。明治45年に建ったもので設計は清水建設の田中実。東京駅を設計した唐津出身の辰野金吾の指導を受けた建物とされる。司馬遼太郎の『街道を行く』に安野光雅の絵とともに登場している。この歴史ある建造物のなかで、シーズンの生牡蠣と佐賀県産の日本酒を味わってもらうという趣向。歴史と文化と味覚が融合する宴である。

実は、旧佐賀銀行の歴史的建造物は、現在、市の保存物になっている。ここでぜひワークショップをしてみたかった。というのも、イタリアのスローフードの世界的な賞に出席するためにトリノに出かけたときに、授賞式がオペラハウスで開かれ、その後のレセプションが、城や王侯たちのかつての住まいなどで開催されていたのだ。「味覚は文化である」というッセージを伝えるために、歴史的建造物が使われている。このコンセプトが素晴らしい。その日本版がしてみたい。夢がようやくかなったのである。

ワークショップは、関係者を中心に50名ほどが集まったのだが、参加者からは大変な好評であった。嬉しかったのは、この模様を毎日新聞のデジタル版のエッセイ「ゆらちもうれ」で紹介したところ、東京や大阪からもとてもいい反応があったことだ。とくに東京からは、あるホテルから研修に使いたいということで筆頭の候補になっているとのこと。この連絡が佐賀県から知らされたことで、あとのワークショップの大きな励みとなった。

この後会場を「ふれあい会館りふれホール」に移して、シンポジウム「スローフードと地域活性化」が開催した。このコーディネートを頼まれたのだが、普段から親しくて、地域活性化で実績があり、改めて話を聞いてみたいと思った3人をお呼びした。実践報告をしたのは、松崎了三氏(高知県馬路村ゆず販売戦略仕掛人)、河野通友氏(大分県竹田市観光課)、小役丸秀一氏(福岡県岡垣町ぶどうの樹オーナー)の3名である。

高知県馬路村は人口1200名の山村。柚子を村の商品として「ぽん酢」「ジュース」などに加工して商品化し、それを売り山し31億円にまでした。通販で11億円を売る。そのデザインからコンセプトまでを行ったのが松崎さんである。竹田市の河野さんは市の行政マン。市で住民と行政マンが連携して行う竹田研究所の初代課長として、観光、農業、商業などを地域を横断的に結び、景観と自然と農産物を生かして、人口2万8000名のところに420万人を呼ぶまでにした功労者の1人だ。小役丸さんは、農家、漁業と連携し、地域にあるものを徹底的に利用したレストラン、寿司店などを展開し、田舎のレストランに16万人を集客。また葡萄の木の下のレストランで行う農家のウエディングに年間250組を集めるまでにした。

3人が実に個性的。それぞれに立場がまったく違う。それでいて地域の個性を最大限に生かすというコンセプト作りは共通している。地域のパーソナルをうまく見つけ出して、それを具体的な形にし着実に実績もあげている。かつ語り素晴らしかった。シンポジウムは、笑い声と共感に包まれ、反応はとてもよかった。県からは、「あの3人で、佐賀県全域をまわってほしいくらい。それほどいい話だった。なにより、具体的で、実践して、実績をあげているところが、とても説得力があります」とのことだった。

12月20日に急遽、唐津市の地域振興課および、合併した地域の支所、そうして農家や漁師さんも集まってもらい、どんなものを食のメインとするか打ち合わせを行った。早速、決めてきたのは棚田米で知られる相知町で、こちらは原木シイタケの体験。農家の農産物を販売する直売所『鳴神の庄』が有名になった七山村は、直営の農家レストランでの地域食材を使った食事会。生牡蠣養殖の唐房の坂口水産は、取引先でもあるイタリアンのワイズキッチンでのフルコース。このレストランのシェフには、肥前町の漁港にも出かけてもらい身近な魚でのブイヤベースを作ってもらうこととなった。

「自然薯とむかごをなんとかしたい」と言った北波多町は、有名な旅館「洋々閣」での料理会を、「鯨の肉を売りたい。それに甘夏の新しい食べ方を」というイカで有名な呼子では、同じ地域にあるフレンチのセゾンドールに協力をお願いすることとした。他もこれから順次決定して行くが、すべて地域食材のテキストを作成し、どんなものがいつ採れて、どんな食材か、他と比べてどうなのか、どれだけあるのかを明確にして行う。また、料理においては生産者、料理家が、それぞれの味わいや材料、料理の方法などを話してもらうことになっている。

締めくくりは、各町が唐津市の中央にある中町に集まりファーマーズマーケットを開催する予定。こちらはファーサード事業が行われていて昭和30年代の雰囲気が作られている。そこにブッキングをする形で、市場をしようというのが構想である。1月4日から佐賀県唐津市入り。わが故郷でのワークショップの打ち合わせから、新年は始まる。 

・問合先 佐賀県くらしの安全安心課(0952−25−7096)

■食育」をテーマに、本を書きました。

イタリアでのスローフード協会の食のワークショップや、静岡の小学校の「おにぎり」での味覚の講座、徳之島での1200名の長寿の食の調査と町を巡るワーキング、全国の学校給食の現場など、自ら参加したものをメインにまとめました。

・書名 『子どもに伝えたい本物の食』
・著者  金丸弘美
・価格  1、680円(税込)
・ISBN 4−7571−5056−3
・出版社  NTT出版
・問合せ先・申し込み NTT出版 遠藤・今井 
 電話:03−5434−1001
 FAX:03−5434−1005

・インターネット書店 Amazon.co.jpから注文ができます。
『子どもに伝えたい本物の食』について、詳しくはこちらをご覧ください。
http://www.amazon.co.jp/o/ASIN/4757150563/ref=pe_snp_563


◎全国「食」の活動は毎日新聞デジタル「ゆらちもうれ」で連載中。
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/shoku/yurachi/

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