書評
    コロナ対策 各国リーダーたちの通信簿    (光文社新書)

 世界7か国、在住の日本人女性ジャーナリストの視点で、コロナが発祥した2020年の初頭からこれまで、その国のリーダーがどんな発言をし、政策と行動をとったか、国の動きはどうなっているのか、感染の様子、国民の生活などを踏まえて描いたリアルタイムの優れたドキュメント。
リポートしたのは栗田路子(ベルギー)、プラド夏樹(フランス)、田口理穂(ドイツ)、冨久岡ナヲ(イギリス)、片瀬ケイ(アメリカ)、クローディアー真理(ニュージーランド)、田中ティナ(スウェーデン)の方々。
コロナは、どの国にも同じように危機をもたらしている。しかし医療の専門家の意見、データをしっかり踏まえ、国民とのコミュニケーションを十分にとり、現在の状況となすべきことを丁寧に伝えることが、不安をやわらげ未来への希望をもたらしているように見える。ドイツ、スウェーデン、ベルギーなどだ。
極端に感染者の少なかったニュージーラントのジャッシ・アーダーン首相(女性)は、最初は厳しい批判を受けたものの、感染者が出てからというものフェイスブックライブで、一般の高齢者から子供たちまでの声を掬い上げ、丁寧にわかりやすく、今、どんな状況で、なぜ制限や対策をするのか、どんなことが可能か、楽しみはなにができるかまで会話することを頻繁に行っている。
イギリスのジョンソン首相、フランスのマクロン大統領、二人とも若くしてリーダーになり就任間もなくは威勢がよかったが、コロナでは、これまでの福祉、医療、国民への配慮がなかったことが露呈されてしまう。典型的なのはアメリカのトランプ大統領。独断と偏見で見解を述べ、専門家の意見も耳に入らなかったばかりか、現場と乖離し、世界最大の感染者数と死者を出している。リーダーの発言と動きで、生死を分かつ大きな人災・事故につながったと言っても過言ではないのではないか。
翻って日本のリーダーと政策の在り方が浮かびあがる。これまでのような目先の経済を優先させていては危機に陥る。いかに専門家と国民によりそい、声に耳を傾けられるかに今後はかかっている。

(食環境ジャーナリスト 金丸弘美)